低濃度アトロピン点眼

点眼薬で近視の進行を緩やかに

お子様の近視が進行していく中で、「できるだけ負担の少ない方法で対策を始めたい」と考える保護者の方は少なくありません。

低濃度アトロピン点眼は、副作用を抑えた濃度の点眼薬を用いて、近視の進行を緩やかにすることを目的とした治療法です。

就寝前に1回点眼するだけというシンプルな方法であることから、近年、近視抑制治療の選択肢として注目されています。

アトロピンは、もともと眼科診療で広く使用されてきた成分ですが、従来の濃度では、強い眩しさや、近くが見えにくくなるといった副作用が問題となることがありました。

低濃度アトロピン点眼では、近視抑制効果が期待される作用を保ちながら、副作用が出にくい濃度に調整されている点が特徴です。そのため、日常生活への影響が比較的少なく、継続しやすい治療として位置づけられています。

低濃度アトロピン点眼の治療メカニズム

低濃度アトロピン点眼は、低下した視力を回復させる治療ではありません。この治療の目的は、すでに始まっている近視の進行、特に眼軸長(眼の前後方向の長さ)が過度に伸びていく過程を緩やかにすることにあります。

近視の進行には、眼球の成長を制御する生理的な仕組みが関与していると考えられています。アトロピンは、もともと自律神経系に作用する薬剤であり、眼の中では調節機能や瞳孔反応に影響を及ぼします。

低濃度アトロピン点眼による近視抑制効果については、現在も研究が続けられており、作用機序が完全に解明されているわけではありません。

しかし、眼球の成長に関わる生理的経路に影響を与えることで、眼軸が過度に伸びる刺激を抑制している可能性が示唆されています。重要な点として、

  • 近視を「治す」治療ではないこと
  • 効果の程度には個人差があること

を正しく理解したうえで、治療を検討する必要があります。

従来のアトロピン点眼との違い

アトロピンは、以前から眼科診療で使用されてきた薬剤ですが、従来用いられてきた高濃度のアトロピン点眼では、

  • 強い散瞳による眩しさ
  • 調節麻痺による近くの見えにくさ

といった副作用が生じやすく、近視抑制を目的とした長期使用には適さないという課題がありました。低濃度アトロピン点眼は、これらの副作用を最小限に抑えることを目的として、濃度が調整されています。

その結果、日常生活や学校生活への影響が比較的少なく、継続的な治療が現実的になった点が大きな違いです。

ただし、副作用が「まったく起こらない」わけではなく、軽度の眩しさや見え方の変化を感じる場合があるため、定期的な経過観察が前提となります。

治療の対象となるお子様について

低濃度アトロピン点眼は、眼球が成長途中にある成長期のお子様を主な対象とした治療です。一般的には、学童期から中学生頃までの、軽度から中等度の近視のお子様が検討対象となることが多いとされています。 ただし、

  • 近視の進行速度
  • 現在の視力や度数
  • 目の状態や生活環境

によって、適応の可否は異なります。

そのため、年齢や度数だけで一律に判断することはできません。すべてのお子様に適応できる治療ではないため、治療開始前には必ず診察と検査を行い、本当に低濃度アトロピン点眼が適しているかどうかを慎重に判断します。

治療の流れと費用

低濃度アトロピン点眼による治療は、まず現在の視力や近視の進行状況を正確に把握することから始まります。

視力検査や屈折検査などを行い、お子様の目の状態や近視の進行スピードを確認したうえで、低濃度アトロピン点眼が適しているかを判断します。

診察の結果、適応があると判断された場合に、低濃度アトロピン点眼を開始します。治療開始後は、一定期間ごとに受診していただき、近視の進行状況や副作用の有無を定期的に確認します。

低濃度アトロピン点眼は、点眼するだけの簡便な治療ではありますが、点眼のみで完結する治療ではなく、継続的な医学的管理が前提となります。効果の評価や安全性の確認を行いながら、治療の継続や見直しを検討していきます。

なお、本治療は自由診療(保険適用外)です。費用には、診察料や検査料、点眼薬の費用などが含まれます。具体的な金額や通院の目安については、診察時に詳しくご説明いたします。

注意点と副作用

低濃度アトロピン点眼は、副作用を抑えた濃度で調整された点眼薬ですが、薬剤を使用する治療である以上、副作用の可能性が完全にゼロになるわけではありません。主に報告されている症状としては、

  • 軽度の眩しさを感じること
  • 近くがやや見えにくく感じること

などがあります。

ただし、低濃度であるため、多くの場合は日常生活に大きな支障をきたすほどではなく、軽微な症状にとどまるケースがほとんどです。

また、まれではありますが、点眼薬に対するアレルギー反応が起こることがあります。目のかゆみ、充血、違和感、目やになどの症状が続く場合は、点眼を中止し、速やかに受診してください。

安全に治療を続けるためには、

  • 指示された用法・用量を守ること
  • 定期的な受診を欠かさないこと
  • いつもと違う症状があれば早めに相談すること

が重要です。

よくあるご質問(FAQ)

点眼を始めると、すぐに効果は分かりますか?

低濃度アトロピン点眼は、見え方がすぐに変化する治療ではありません。治療の目的は近視の進行スピードを抑えることにあるため、効果の判断は数か月単位で行います。短期間での変化が乏しくても、継続的な評価が重要です。

途中で点眼を中断すると、近視が急に進むことはありますか?

中断したことで急激に悪化するケースは多くありません。ただし、点眼による抑制効果は期待できなくなるため、本来の進行ペースに戻る可能性はあります。中断を考える際は、経過を踏まえて相談することが大切です。

両目とも点眼が必要ですか?

通常は両眼への点眼を行います。片方の目だけ近視が強い場合でも、眼の成長は左右で影響し合うと考えられているため、両眼治療が基本となります。

コンタクトレンズを使っている場合でも併用できますか?

併用できる場合がありますが、装用時間やレンズの種類によって注意点が異なります。安全に使用するため、使用状況を確認したうえで判断します。

夜に点眼できない日が続くと問題になりますか?

数日の点眼忘れで直ちに問題が生じることは通常ありません。ただし、使用が不規則になると、治療効果の評価が難しくなるため、できるだけ一定のリズムでの使用が望まれます。

学校検診の視力が改善した場合、治療は成功と考えてよいですか?

学校検診の結果だけで、治療の成否を判断することはできません。低濃度アトロピン点眼では、視力の数値よりも進行の経過を重視して評価します。

兄弟姉妹も同時に始めた方がよいでしょうか?

必ずしも同時に始める必要はありません。兄弟姉妹であっても、近視の進行状況や生活環境は異なるため、一人ひとり個別に判断します。

他の近視抑制治療と組み合わせることはありますか?

場合によっては、他の対策と併用を検討することもあります。ただし、治療を重ねるほど良いとは限らないため、目的と効果を整理したうえで慎重に判断します。

成長が止まった後に続けても意味はありますか?

成長が落ち着くと、治療の目的や必要性は変わってきます。その時点での近視の状態を確認し、継続・終了を再評価します。

治療を始めるか迷っている段階でも相談できますか?

もちろん可能です。低濃度アトロピン点眼は、十分な説明を受けたうえで選択すべき治療です。現状確認のみの相談でも問題ありません。

医師からのメッセージ

低濃度アトロピン点眼という選択肢について

お子様の近視が進行していく中で、「今、何か始めた方がよいのだろうか」「治療と呼べるものを使う必要があるのだろうか」と迷われる保護者の方は少なくありません。

低濃度アトロピン点眼は、近視を治す治療ではなく、進行をできるだけ緩やかにすることを目的とした治療です。点眼という比較的負担の少ない方法で取り組める一方、効果や適応には個人差があり、すべてのお子様に同じ結果が得られるわけではありません。

また、「副作用が少ない」とされる低濃度であっても、薬剤を使用する以上、定期的な診察と経過観察は欠かせません。この治療は、点眼だけで完結するものではなく、眼科医による継続的な評価と管理を前提とした医療行為であることをご理解いただくことが大切です。

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