日中は眼鏡やコンタクトなしで過ごしたいお子様へ
オルソケラトロジーは、就寝中に特殊な形状のコンタクトレンズを装用し、角膜の形を一時的に整えることで視力を矯正する治療法です。夜にレンズを装着して眠り、朝起きて外すと、その日一日は裸眼でも見えやすい状態を保つことができます。
この仕組みから、「寝ている間に視力が良くなる」という印象を持たれがちですが、実際には目の成長や近視そのものを治す治療ではありません。あくまで、角膜の形を利用した一時的な視力矯正であり、眼科医の管理のもとで行う医療行為です。
保護者の方からは「目にレンズを入れたまま寝て本当に大丈夫なのか」「子どもに使わせても安全なのか」といった不安の声を多くいただきます。当院では、そうした疑問に正面から向き合い、メリットだけでなく注意点も含めて分かりやすくご説明します。
オルソケラトロジーが選ばれる3つのポイント
① 近視の進行を緩やかにする効果が期待できる
オルソケラトロジーは、単なる「見え方の改善」だけを目的とした治療ではありません。成長期に問題となる近視の進行スピードを抑える可能性がある点が、近年注目されています。
近視が進む主な原因の一つは、眼の奥行き(眼軸)が前後に伸びてしまうことです。オルソケラトロジーでは、角膜の形を整えることで網膜へのピントのズレを軽減し、眼軸が過度に伸びる刺激を減らすと考えられています。
完全に近視を止める治療ではありませんが、「将来、強い近視になるリスクを下げる」という視点で選択されることが多い治療法です。
② 日中は裸眼で過ごせる
オルソケラトロジーの最大の特徴は、夜にレンズを装用するだけで、日中は裸眼で過ごせる点です。学校生活では、黒板を見る・教科書を読む・体育や部活動に参加するといった場面が連続しますが、その都度、眼鏡やコンタクトを気にする必要がありません。
特に、
- 水泳やサッカーなど眼鏡が不向きなスポーツ
- 眼鏡をかけたがらないお子様
- 日中のコンタクト管理が難しい年齢
こうしたケースでは、生活の質を下げずに視力を確保できる方法として選ばれています。
③ 日中のレンズトラブルを避けやすい
日中にコンタクトレンズを装用しないため、
- 学校でのレンズ紛失
- 砂やゴミが入って目を痛がる
- 乾燥やこすり過ぎによるトラブル
といった日常的なコンタクトトラブルが起こりにくいのも特徴です。
特に小中学生の場合、日中の自己管理には限界があります。
オルソケラトロジーは、管理の中心が家庭(夜間)にある治療法であるため、保護者が状態を把握しやすいという利点があります。
なぜ視力が良くなるのか(矯正の仕組み)
オルソケラトロジーは、近視そのものを治療する方法ではなく、角膜形状を一時的に変化させることで屈折状態を調整し、視力を矯正する治療法です。
眼の成長や眼軸長を短くする治療ではない点を、まず正しく理解しておく必要があります。

近視は「屈折の位置がずれている状態」
近視では、目に入った光が網膜上ではなく、その手前で焦点を結んでしまいます。この状態では、遠方視が不明瞭になります。
眼の屈折力の大部分は角膜が担っているため、角膜の形状をわずかに変えるだけでも、光の屈折状態は変化します。オルソケラトロジーは、この点を利用した矯正方法です。
角膜に起きている変化
オルソケラトロジー用レンズは、一般的なコンタクトレンズとは異なり、リバースジオメトリーデザインと呼ばれる特殊な形状をしています。この設計により、睡眠中に角膜中央部の形状が緩やかに変化し、屈折力が調整されます。
重要なのは、角膜を削ったり、強い圧力を加えたりしているわけではないという点です。 主に角膜最表層である角膜上皮の厚み分布が変化することにより、屈折状態が修正されると考えられています。
なぜ睡眠中に装用するのか
睡眠中はまばたきや視線移動がなく、レンズの位置が安定しやすいため、角膜形状が均一に変化しやすい状態になります。ただし、睡眠中は異常に気づきにくい時間帯でもあるため、適切なフィッティングと定期的な検査が不可欠です。
レンズを外しても視力が保たれる理由
レンズ装用によって変化した角膜形状は、レンズを外した直後も一定時間維持されます。そのため、日中は裸眼でも見えやすい状態が保たれます。
ただし、この効果は永久的なものではなく、時間の経過とともに角膜は元の形状へ戻ろうとします。視力の持続時間には個人差があり、夕方以降に見え方が変化する場合もあります。
可逆性について
オルソケラトロジーの角膜形状変化は、主に角膜上皮で起こるため、装用を中止すれば角膜は徐々に元の状態に戻ります。この可逆性が、角膜を恒久的に変化させる屈折矯正手術との大きな違いです。
ただし、「元に戻る=リスクがない」という意味ではありません。安全性は、正しい使用方法と継続的な医学的管理によって担保されるものです。
近視進行抑制との関係
オルソケラトロジーは、中心視の矯正だけでなく、角膜形状変化によって網膜周辺部の焦点環境にも影響を与えると考えられています。この作用により、成長期に問題となる眼軸長の過度な伸展を抑える可能性が示唆されています。
ただし、近視進行抑制効果には個人差があり、すべての方に同等の効果が得られるわけではありません。
治療のリスク・副作用について
オルソケラトロジーは、安全に使用できる治療法である一方、コンタクトレンズという高度管理医療機器を使用する以上、一定のリスクが存在します。
代表的なものとして、レンズの洗浄や管理が不十分な場合に起こりうる角膜感染症があります。また、夜間に光がにじんで見えるハロー・グレア現象や、装用初期の違和感を感じることもあります。これらのリスクを最小限に抑えるためには、
- 正しいレンズケア
- 決められた装用方法の遵守
- 症状がなくても受ける定期検査
が不可欠です。
自己判断での使用中断や長期放置は、トラブルの原因となるため注意が必要です。
治療の対象・適応検査
オルソケラトロジーは、すべてのお子様に適応できる治療ではありません。一般的には、小学生・中学生を中心に、大人までが対象となりますが、近視や乱視の度数、角膜の形状によって適応可否が分かれます。
特に、近視や乱視が強い場合、角膜に問題がある場合、重度のアレルギー性結膜炎がある場合などは、治療が難しいことがあります。
そのため、治療開始前には必ず適応検査を行い、安全に使用できるかを慎重に判断します。
治療の流れ
治療は、まず適応検査から始まります。角膜の形や近視の度数を詳しく調べ、オルソケラトロジーが可能かどうかを確認します。
次に、体験装用(テスト装用)を行い、実際の見え方や装用感を確認します。問題がなければレンズを作成し、本格的な治療を開始します。
治療開始後も、1週間後・1か月後・3か月後といった定期検診を行い、安全性と効果を継続的に確認します。
費用・料金体系について
オルソケラトロジーは自由診療(保険適用外)となります。
費用には、適応検査料、レンズ代、定期検査料、ケア用品代などが含まれます。治療開始前に、費用の内訳や継続的にかかる費用についても、丁寧にご説明します。
よくあるご質問(FAQ)
寝ている間にレンズを入れていて、本当に目に影響はありませんか?
正しい使用方法と定期的な検査を守っていれば、多くの場合は安全に使用されています。ただし、オルソケラトロジーは高度管理医療機器であるコンタクトレンズを使用する治療のため、眼科医の管理のもとで行うことが前提となります。自己判断での使用は避けてください。
感染症はどのくらいの頻度で起こりますか?
頻度は高くありませんが、ゼロではありません。特に、レンズの洗浄不足や手洗い不十分な状態での装着は、感染症リスクを高める要因になります。日々のケアと定期検査が最も重要な予防策です。
子どもが違和感をうまく訴えられない場合は大丈夫でしょうか?
お子様は異常を言葉で表現しにくいことがあります。そのため、保護者による観察と定期検診が非常に重要です。目やにが増えた、目を頻繁にこするなどの変化があれば、早めに受診してください。
装用中に痛みや強い違和感が出た場合はどうすればいいですか?
痛みや強い違和感がある場合は、すぐに装用を中止し、受診してください。無理に使い続けることで、角膜にトラブルが生じる可能性があります。
毎日必ず装用しないといけませんか?
基本的には、決められた頻度での装用が推奨されます。装用を中断すると角膜の形は徐々に元に戻り、視力も低下します。装用スケジュールについては、診察時に個別にご説明します。
途中でやめた場合、目に悪影響は残りませんか?
使用を中止すると、角膜は徐々に元の状態に戻ります。オルソケラトロジーは可逆性のある治療であり、適切に管理されていれば、使用中止そのものが直接的な悪影響を残すことは通常ありません。
成長期が終わった後も続ける必要はありますか?
必ずしも続ける必要はありません。近視の進行状況や生活スタイルに応じて、中止・他の矯正方法への切り替えを検討することがあります。継続の可否は定期検診で判断します。
ハロー・グレア現象はずっと続きますか?
多くの場合、装用初期に一時的に感じることが多く、時間とともに軽減するケースがほとんどです。ただし、見え方に強い違和感が続く場合は、レンズ調整や再評価が必要になります。
学校行事や旅行などで装用できない日があっても問題ありませんか?
短期間であれば大きな問題にならないことが多いですが、視力が低下する可能性はあります。事前に予定が分かっている場合は、対応方法をあらかじめ相談することをおすすめします。
まずは相談だけでも可能ですか?
もちろん可能です。オルソケラトロジーが適しているかどうかは、検査と説明を受けたうえで判断していただけます。相談=治療開始ではありませんので、安心してご相談ください。
医師からのメッセージ
オルソケラトロジーは、日中を裸眼で過ごせるという大きなメリットがある一方、正しい管理が前提となる治療法です。
「向いているかどうか」「本当に必要かどうか」は、お子様一人ひとりで異なります。まずは目の状態を正しく把握し、そのうえで最適な選択肢を一緒に考えていくことが大切だと考えています。
不安や疑問があれば、どうぞお気軽にご相談ください。治療を始めるかどうかは、十分に理解したうえで決めていただいて構いません。









